首の病気
頸(くび)の病気(1) ? リンパ節炎
頸部(けいぶ)リンパ節
人の頸(くび)には 100 から 200 個ものリンパ節が存在すると言われています。頸部のリンパ節に炎症が起こり 1cm 大以上にはれると触れるようになります。頸部リンパ節炎はリンパ節に炎症がおこり痛みや腫脹(はれ)がみられる場合をいいます。原因はウイルス,細菌などによる急性感染性リンパ節炎が最も多くみられます。まれに結核性のリンパ節腫脹がみられることがあります。この他には癌の転移性リンパ節との鑑別が重要です。
のどの炎症や虫歯の炎症が広がる場合、頸部のリンパ節が感染の広がりを防ぐ役割を担っています。この場合、リンパ節炎がおこります。
1 ) 急性のリンパ節炎
[代表的な症状]
頸部のリンパ節が腫脹(はれ)します。押すと痛み(圧痛)がみられます。大きさ、数も原因により様々です。
[どうして病気がおこるのか
]
急性咽頭、扁桃炎が原因でおこることが最も多い。虫歯も原因として多い。
[どんなあらわれかたをするか]
通常は小指の頭大で、押すと痛みを伴うリンパ節腫脹が頸(くび)に見られます。咽頭、扁桃炎がなくなるとともに触れなくなります。ウイルス性炎症性疾患では頸部のリンパ節炎を伴う病気もあります(伝染性単核球症など)。伝染性単核球症は EB ウイルスによる感染症で、扁桃炎とともに両側の頸部の上から下にかけて母指等大以上の多発性の痛みを伴うリンパ節の腫脹が見られます(図)。
[病気を治す]
原因を取り除く。口やのどに急性の炎症があれば治療する。それに伴いリンパ節が消失することが多い。リンパ節が大きくなる場合は精密検査が必要となります。
[おこりやすい合併症]
病原細菌の感染力が強い場合や抗生剤投与が適切でない場合に、あるいは体の抵抗力が落ちる時(糖尿病などの基礎的な病気がある場合)には炎症が進むと膿(うみ)を形成し、重症化します。
2 ) 慢性のリンパ節炎 :
[代表的な症状]
痛みは軽度。急性のリンパ節炎と同様に圧痛はありますが軽微です。リンパ節の腫脹が 2-3 ヶ月続きます。慢性咽頭炎、扁桃炎が原因のことが多い。
[病気を治す]
原因となる病気の診断が重要です。多くのリンパ節炎は咽頭炎、扁桃炎に伴って発症するものと考えられます。また、虫歯(齲歯)に伴う場合も多くみられます。原因疾患の治療を行ないます。原因疾患が治癒すると共に症状は軽快、治癒します。
[症状がよく似ている病気]
特殊なリンパ節炎の結核や悪性疾患のリンパ節転移との鑑別が重要です。
1) 圧痛が強い場合、 2) 人差し指の大きさを越えるリンパ節の多発性腫脹、 3) 急速に大きくなるリンパ節、 4) 動きの悪いリンパ節腫大の見られる場合はなるべく早く精密検査が必要です。
頸(くび)の病気(2) ? 腫瘍
頸(くび)の腫瘍の代表的にものは甲状腺腫瘍です。
1) 甲状腺腫瘍 :女性に多く見られる腫瘍です。良性が 7 ? 8 割、悪性が 2-3 割にみられます。甲状腺腫瘍の多くはゆっくりと大きくなります。おとなしい腫瘍と言えます。悪性腫瘍は硬く触れます。甲状腺腫瘍は大きくなると手術が必要です。
2) 耳下腺腫瘍 :良性腫瘍が 7-8 割、悪性腫瘍は 2-3 割にみられます。数は多くない腫瘍ですが、顔面神経が関係し、良性腫瘍でも再発を来す腫瘍で取り扱いに注意が必要です。腫瘤があれば原則、手術が必要です。
3) 顎下腺疾患 :腫瘍は少なく、多くは唾石がみられ、顎下腺が急速に痛みを伴って腫脹します。手術的に唾石を摘出します。
4) その他 ;色々な腫瘤がみられますが、その発生する部位や、硬さ、大きさが異なりますので、検査で診断がつきます。
5) 転移性リンパ節 :悪性腫瘍が頸のリンパ節節に転移し、リンパ節が大きくなったものです。リンパ節炎のような痛みはありません。最も診断に注意が必要な腫瘤です、口、のど(咽頭)、喉頭、甲状腺が原発腫瘍の事が多く、検索が必要となります。
右上:甲状腺腫瘍、左上:顎下腺腫瘍、右下:正中頸嚢胞、左下:悪性の転移性リンパ節
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